よろず屋ジュンのつれづれ

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母と2B弾

私の母は今年88歳。若いころは、回遊魚??というくらい一日中うちの中をうろうろしていた。そんな母だから、けがは当たり前。そこで今でも我が家伝説の母のけがのエピソードをひとつ。

あれは忘れもしない、まだ私が小学一年生だったころ。

文房具屋を営む父の友人が、「おひなさまだから。」といって我が家にひなあられと

なぜか2B弾をもって遊びに来てくれた。私はひなあられを食べテーブルの下にこぼしていた。(のであろう?)もちろん2B弾も一緒に。

せかせかした性格の母は、父の友人が帰られた後すぐ、「あーもう、ちらかして、(怒)」と言いながら、テーブルの下を片付け始めた。

その瞬間だった。〝バン!!〟と大きな音がした。

父も私も最初何の音だかわからずにいたが、母のほうを振り返ってみると母の口から煙が出ている。空也の口から念仏が出てくるのあの写真のように(皆さん一度は教科書でみたことありますよね??)

事態を察した私と父は目を合わせ、母には大変申し訳ないが吹き出してしまった。

吹き出した私たちに「どうしよう。」と母は泣きそうになりながら言った。とにかく病院へと促したが母はさすがに恥ずかしかったのだろう。

父の袖を握り必死に首を振る。仕方なく近所の薬局へ家族みんなで走った。

薬局へ行き父が「あのー、口の中をやけどしました。なにか薬はありますか?」と言った。

お店の人は「やけどですか?お茶かなにかで?」

「いやそれが、爆弾が破裂して。」と父。

「ば、爆弾ですか?!!」と仰天する店員さん。

「はい。えーと爆弾というか、2B弾です。」

「2B弾??それはまたなんで??」と二人の会話はだらだら続き、いつまでも薬は出てこない。

そんな二人にいらいらしだした母は、いきなり店員さんに口を開けて指をさして見せた。鬼の形相の母の様子に恐れをなしたのか?店員さんはすぐに薬をだしてくれた。

自宅で薬を塗る姿を見たとき、母の口の中は真っ黒になっていた。

私のこぼしたひなあられとそれに混じった2B弾を間違って口にいれて嚙んだようだ。

その夜母は、あまりの痛みで眠れなかったそうだ。

次の日、近くの病院にいきしばらく通院していた。どのくらいの期間かはっきり覚えていないが、完治にはしばらくかかった。初診の日、病院の先生の必死に笑いをこらえる姿が母はひどく恥ずかしかった、と言っていた。

後日、「あの時は舌が飛んだと思ったよ。」と笑って話す母に

「拾い食いなんかするからだ。」と父が怒っていたのを覚えている。

 

そんな母も今はガンになり、回遊魚ではなくなった。

元気な時はハラハラさせられていたけれど、今、一日中自宅のベットで静かに眠る母をみているとあの日々が懐かく思い出される。